category:From マスター
なんか見てる私のほうがどきどきした。
もし私が舞うことがあったらと思うと・・
とんでもない。私が舞台で舞楽をやるなんて考えられない。
でも、本音はちょっとやりたいかも。
演奏はもちろんだけど、舞台で舞うなんて主役って感じがして、ちょっとかっこいいかも。
初めての演奏会はばたばたしているうちに終わった。
まだ初めて5ヶ月足らず、今こんな場所に自分がいてることが信じられない。
夢のようと言う感じ。
終わって直会(なおらい)、ようするに慰労会みたいな感じ。
ここでも私は裏方さん。
お弁当を配ったり、お酒をついだり。
中冨くんも、もうおおはしゃぎ。
やっぱりほっとしてるんだろうな。
次の演奏会は11月らしい。
次は私もちゃんと演奏に加われたらいいな。
この日の経験から、私の笛の稽古も一層熱が入るようになった。
暇さえあれば笛を吹いた。
もういくら吹いても酸欠見たいにはならない。
自分でも随分うまくなった気がする。
そんなある日、今日も朝から家で笛を吹いていたら・・
「もう、いい加減にしなさい。朝から家で笛を吹いてたら近所迷惑でしょ」と怒られてしまった。
そこで、奈良公園で吹くことにした。
公園の奥の方で何時も練習する場所がある。
冬はさすがに無理だけど、龍笛は屋外で吹く方が実際気持ちがいい。
6月の奈良は新緑とその新緑をゆする初夏の風。
その中で笛を吹いていると、現代か過去の世界に居るのかわからない感じ。
いい感じで笛を吹いていたら、目の前に男の人が。
なんか突然だからびっくりした。
でも、公園で吹いてると時々人が寄ってくるからあんまり気にせず吹くことにしてる。
と、「君は笛をやってどれぐらいなんだ?」
「え、あ、はい。6ヶ月ほどです」
「今のうちにもっと全身で吹くようにしとかなあかん、そんな弱い息で吹く癖が身についたてしもたら、一生そんな弱い音色しかでえへんぜ」
「竜笛はフルートと違う、力や、それに唱歌、きちっとやってへんのと違うか?」
「拍子が長ごなったり短こなったりしてる」
「唱歌をきちっとしてへん証拠や」
「まだ半年ぐらいの初心者やったら、今のうちに悪い癖はなおさなあかんな。ま、せいぜい練習し、じゃましたね」
え~さんざんけなしていっちゃった。
何、あの人。
でも、間違ったことは言ってない。
雅楽をやってる人なんかな?
奈良には他の団体でやってる人もいてるし。
う~ん。
厳しいご指摘。
吹くことは一生懸命やってるけど、唱歌は実際あんまり熱心にはしてない。
それに息を長くもたすために、思い切り息を入れてない。
どうして私がフルートをやってたってわかったのかな?
やっぱりどことなく、フルートの癖がでてるのかも。
反省。
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奈良は今正倉院展で大賑わいです。
お蔭様で、アカダマも日頃の暇さとうってかわって大忙しです。
11月の27,28に奈良県新公会堂にて、かるたフェスティバルを1300年関連の事業として行います。
これも最後の調整でてんやわんやで、店どころ?ではない忙しさです。
というわけで言い分けですが、小説になかなか取り掛かれません。
まあ、実際どれだけ読んでもらえるのか疑問ですが、一応完成はさせるつもりですので、もし呼んでいただけるなら、いま少し時間をいただけたら幸いです。
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管弦の演奏。
文字通り管楽器と弦楽器の演奏。
これに対して、舞楽は弦楽器は使わない。
と言うわけで、弦楽器として、琴と琵琶が入る。
最初に音取りと言って、簡単な曲を演奏する。
これも文字通りで、管弦の演奏の曲の調子を合わせるために、次々と楽器が加わって音を取っていくから音取り。
そして、曲が始まった。
もう口の中がからから。
最初に笛が音頭といって一人で吹き出す。
そして最初の拍子で鞨鼓と鉦鼓が入る。
鉦鼓は2本の撥でチ、チンとちょっとづらして叩く。
後は、ずれないように必死で曲を追いかけてチ、チンとひたすら叩く。
演奏全体なんて聞く余裕はなし。
ただただ、拍子をはずさないよう、必死だった。
終わった、もう手は汗でびっしょり。
舞台から降りてようやく生き返った気がした。
ともかく無事役割は果たせたと思う。
他の人は引き続き演奏に加わるから、批評やお小言はなし。
多分文句を言われるようなことはないと思うんだけど・・
私の今日の役目はこれで終わり。
後は裏方。これも初めての経験だから、なにもかも珍しい。
日頃一緒に稽古してる小学生が今日は舞人として舞台に立つ。
女の子も一緒。まあ装束をつけたらあんまり変わらない、せいぜい髪の毛で見分けがつくだけ。
笛の子も3人舞人として出演する。
さすがに何時もとは様子が違って、ちょっと緊張気味。
子供の舞は,迦陵頻と胡蝶の2曲。
迦陵頻は左舞、胡蝶は右舞。
左舞というのは主に中国から伝わった曲で、装束は赤を基調とし、右舞は主に朝鮮から伝わった曲で、装束は青が基調。
左と右の舞が普通は番舞といって交互に演じられる。
他にも右、左舞でいろいろ約束事がある見たいだけど、まだあんまりよくわからない。
ともかく、その左舞の迦陵頻の舞に小学3年生の中冨と言う子がでてる。
1番最年少ということで4人舞の4臈。
要するに4番目に登場した。
出る前からかなり緊張してるのがわかったけど、舞台に上がってからもなんかおどおどした感じが伝わってくる。
無事に舞えたらいいんだけど・・
なんか自分のことのようにどきどきする。
あ~あ、間違えた、周りの子ばっかり見て。もう見てられない。
やっと曲が終わって、舞台から引き上げてきた。
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それからは毎日のように笛を吹いた。
自分でもどんどんうまくなるのが実感できる。
周りからも、上達が早いってほめられ、人間が単純だから、ますますやる気が出てきて、学校へ行かないひは、ほとんど笛を吹いてる感じだった。
5月5日、子供の日。
私が雅楽を始めて5ヶ月、初めての演奏会が春日大社の万葉植物園で行われた。
朝から舞台の設営にも駆りだされて大忙し。
万葉植物園は万葉集にゆかりの草花を集めた植物園で、わりと地味な感じだが、5月は満開のつつじが池の中の舞台を取り囲むように咲き誇ってとっても華やかな雰囲気。
私も始めての演奏会で心が浮き立つようだった。
それに初めて装束を着る。
直垂(直垂)と言って、鎌倉時代の武士の普段着とか。
頭には烏帽子。
装束を着ただけで、嬉しくなっちゃった。
おまけに、演奏会では私にも大役が与えられた。
鉦鼓(しょうこ)と言って打楽器の鉦。
チンチンという音がする。太鼓や鞨鼓と一緒に鳴らす。
こういうのは打ち者といって、演奏会では1番前に座る。
これだけでもなんかえらくなった気がする。
それに笛とかだったら大勢で吹くから自分の音もよくわからないけど、鉦は一人だからもし間違えたら大恥。
ドキドキしながら出番を待っていた。
「よ、装束似合ってるやん、間違えんと叩きや」
笛の先生、あのちょっと生意気な感じの人。
わかってます、それでなくても緊張してるのに、余計なプレッシャかけんといてほしい。
時間になって、池の中の浮き舞台へ。
それぞれの位置について一礼。
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待ちかねた土曜日、いさんで家を出て稽古場へ。
『今晩は』
おや、先週と大分顔ぶれが違う。
先週わたしを指導してくださった宮川さんの姿は見えない。
代わりに先週はいてなかった若い結構イケメンの男性が指導者の席に。
へ~あんな人も居たんだ。
『今晩は私先週から来た春野といいます』
「あ、そうなの。まったくの初めて?ふ~ん、すぐやめんといてな、若い女の子はあんまり続かんから」
なんか、ちょっと生意気な感じ、見た目はいいんだけどな。
『それじゃ。今日も越天楽からな』
その人の指導で今日は練習が始まった、私も皆と一緒に唱歌。
ひたすら唱歌、何度も何度も唱歌。もういや。
と思ったころ、ようやく、「そしたら吹いてみよう」
ああ良かった。やっと吹ける。
「え~と春野さんやったかな、春野さんはまだ無理やから唱歌な」
え~うそ!楽しみに1週間待って一生懸命練習してきたのに。
もう、今日の練習も唱歌で終わり?ありえない。
そして、皆が合奏してる横で一人唱歌。
みじめ・・・
皆の合奏が終わった。
「よっしゃ、まあまあやな、ほんならちょっと春野さん、音出してみて、うん、どの音でもいいよ」
わ~、やった、吹かしてもらえる、どん底まで落ちてた気分が一気に甦る感じ。
カタカナでテ,平調という音を吹く。
おや!!という表情で、『うん、音でてるやん』
『指は教えてもろたんか?』
「はい、ノートに書いてもらいました」
「そしたら越天楽の最初の1行吹いてみ」
どうせ、吹けないだろって感じが見え見え。
トラロ ヲルロ タアロラ
必死で吹いた。
「うまいやん、え~ほんまに始めてなんか?
音程もしっかりしてるし、コリャびっくりやな、大分練習してきたな」
かなり気分はハイ、にっこり微笑んでおいた。
意外にいいやつやんか。
「よっしゃ、そしたら最後に通してもう1度皆で吹いて、それから合奏や」
わ~認めてもらえた感じ。
それに合奏やて、嬉しい。もうなんか1人前みたい。
笙、篳篥も加わって合奏してその日の練習は終わった。
やっぱり一人で練習するのとは大違い。
あれだけ嫌いだった合奏が、この雅楽ではこれだけ楽しいなんて。
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