category:From マスター
あくる日、天理の町に買い物に言った。
同じ奈良県でも、用事もなかったし1度も来た事がない町。
町中が天理教一色って感じ、その中の商店街が今日の目的、神具店を探して商店街へ、でも探すまでもなくあっとこっちに神具店はあった。
へ~あるとこにはあるんだ。ちゃんと雅楽の楽器の売り場がある。CDも売っていた。
目的は笛、でも本物は高くて私には無理。
練習用にプラスチックでできた笛がある。
それをまず買ってくるように昨日アドバイスされた。
それだと、なんとか私の小遣いで買える。
そして、天理教用の雅楽の譜本も売っている。
今までは皆、譜本は手で写していたらしい。
でも今ではコピーもあるし、こうやって簡単に印刷された譜本もある。
よし、これで準備はできた。来週からは笛を吹いて練習できる。
家に帰って、さっそく吹いてみた。
初めて手に入れた楽器を吹く時は、なんかとっても嬉しいというか、どきどきする。
笛を吹くところを歌口というらしい。
そこに唇を当て息を入れる。
うれしい!ちゃんと鳴ってくれる。
コツ的にはフルートとかわらない。
息を強く入れると、1オクターブ高い音が出るのも一緒。
わ~楽しい!昨日ノートに書いてもらった音階を吹いてみる。
これもちゃんと、音が出る、めちゃ楽しい。
もう夢中、そのうちあたまがぼーとしてきた、酸欠ってやつ。でもこれもフルートで経験済み。
来週の稽古がものすごく楽しみ、あ~早く土曜日が来てほしい。
こんな気持ちになったのは久しぶり。
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いざとなったら、ちょっとひいてしまう。
でも、覚悟を決めて行くことにする。
だって言い出したんは自分やし。
ここでぐずぐずしてたら何にも始まらへんし。
そして土曜日が来た。
朝からなんか緊張して落ち着かなかった。
やっぱりやめよかな、いややっぱり行こう。
何度か同じことを繰り返して考えてるうちに夜になってしまった。
7時前覚悟を決めて用意したお菓子を持って神社に向かった。
障子越しに何人かの人の気配。
思い切って声をかける。
「今晩は、今日伺うって連絡してあったと思うんですけど、笛を習いたいんですけど」
「ああ、春野さんですね、え~と笛をやりたいって言ってたね。
じゃとなりの部屋へ行って笹山って人に言って」
『よろしくお願いします、春野ともうします』
どうやら楽器ごとに部屋が違うみたい。
入った次の部屋が笛らしい。
そこには6~7人の人が,良かった、女の人も2人いてる。
学生と言うか子供も2人、後年配の人。
笹山という指導者の人がその年配の人に私を指導するように言ってくださった。
『よろしくお願いします』
「え~と、まだ楽器持ってないんだね。それじゃとにかく今日は唱歌だけやろうか」
雅楽と言うのは本来西洋音楽のような楽譜はなかったらしい。
基本は口承、要するに口伝え。
笛もだからまず唱歌といって、楽譜がわりに歌を歌ってそれでリズムを覚えるとのこと。
まず基本として、越天楽と言う曲の譜、カタカナが並んでるのをノートに書いてもらって、それを、その年配の人、宮川さんって言うんだけどその人が歌うのを後からついて歌う。
ト ラ ロ ル ロ・タ アロ ラ ア
六 テ 中 タ 中 テ 六 テ
上のカタカナを唱う、下の六とかテとか言うのが指穴を表すらしい。
この練習はかなり単調。
笛もないし、今日はこれしかできない。
でも、昔は膝たたき3年とか言って、笛をもたしてもらうのは,唱歌がちゃんとできてからしか駄目だったとか。
今はすぐ笛も吹かしてもらえるらしい。
この日は結局、越天楽をひたすら唱うだけで終わった。
来るまで大分ドキドキしたけど、まあ初めての日としてはこんなものかな。
でもかっこいい人がいてるわけでもないし、友達になれそうな人もいないし、練習は全然おもしろくなかったし、続けられるかな?
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「ふ~ん、そうやったんか。よっしゃ、そしたらお父さんに聞いとくは。お父さん確か雅楽をやってる人、知ってるって言ってたと思うねん」
「え~ほんと!!雅楽って誰でもできるんかな?」
「わたしもわからへんけど、まあ聞いてみるは、お父さんと私、昔よく見に行ってたんよ」
「え、雅楽を?」
「うん、なんか癒される感じがして好きやったの。あの笙の音は良いやろ。蘭陵王も良い舞やね。」
「へ~意外、そうやったんや。あれ笙っていうの?それに今日見てきた舞、蘭陵王っていうの?」
「そう、雅楽でも代表的ていうか、1番人気がある舞。あのリズムは素敵やね」
今までお父さんやお母さんが雅楽を好きだったなんて聞いたことがなかった。
それにわりと詳しいし、ちょっと見直した。
そうか、あの神秘的な音色の楽器は笙、そして、力強い音色の笛が篳篥。
横笛は龍笛っていうことを、教えてもらった。
やっぱりフルートをやってたこともあるし、私は龍笛の音色に1番惹かれる。
よし、もしやれるなら絶対竜笛を習うぞ。
でも、ほんとに私にもできるのかな?
おん祭が終わったら、奈良では一気に年末の雰囲気。
年末年始はわたしはそれこそな~んにもせず、だらだら過ごした。
考えてみると、1年前の正月は入試直前、正月気分なんてほとんどないままに終わったから、こうやって何の予定もなくだらだら過ごすのも悪くないな。
そして、ようやく正月気分も少しとれたころ、「おい、奈美。今度の土曜日に駅の近くの神社に7時に行ったらいいから」
「え、なに。」
「ほれ、雅楽やりたいんだろ。ちゃんと頼んでおいたからな」
「え~・・・」
それはいきなり。年末年始ですっかりぼけていた私は、雅楽のことはすっかり抜け落ちていた。ほんとに言ってくれたんだ。
どうしよ。なんか急に、なんていうか怖いっていうか、逃げ出したい気分になった。
「そんなん急に言われても」
「なんや、今度の土曜日予定でもあるんか?」
「いやべつにないけど」
「ほんならええな。井上って言う人が1番えらい人やから、ちゃんと挨拶するんやぞ、そや最初の日は、なんかお菓子持って行き」
「は~い」
わ~。どうしょ!もちろんやりたいんだけど、
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ほとんど息を詰めるようにしてみていた。
突然舞が止まる。そして笛、太鼓。
少しの間をおいて、まさに妙なると言う表現がぴったりな、か細いでも強い綺麗な音色が立ち上る。
そして、強い音色、なんだろ聞いたことのない音、そして笛。
舞が再び始まる。
「ただいま」
「あら、わりと早かったのね」
「うん、寒いしまだまだ終わりそうにないし,なおが、もう帰ろってうるさいから、ほんまはもっと見てたかったんやけど」
「へ~、もっと見てたいなんておもったん?」
「うん、ものすごく気にいった。あの笛最高やわ、それに舞いも」
「そりゃ良かったね」
「おかあさん、わたしあの笛吹きたい!」
「何ゆうてんの、フルートはもう飽きたんか」
「フルートは好きやねんけど、高校の部活のこともう、思い出しとないねん」
「え、部活熱心にやってたから、喜んでやってるって思ってたのに違ったの」
「無理やりやらされてたんよ、なんか皆の気持ちがばらばらで、顧問の先生は勝手で」
「そんなことちっとも言はへかったよって、知らんかった」
「そんなこと、親にまで言うこと違うやんか、だから、なんかフルートも、もういいかって気分なの」
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「あ、ここかな?ちょっと人が見えるよ」
一の鳥居をくぐったら、参道には昼間のお渡りのための竹矢来、そして向こうの方に明かりが見えてほっとした。
あんまり人が少ないので、ほんとにやってるか、かなり心配になってところ。
と、ど~んという、重い太鼓の音が聞こえた。
間違いない、あこだな、どんどん歩いていくと、太鼓の音に重なるように、乾いた鼓の音、それに鉦の音も。
さらに、笛の音が・・・その音色を聞いた時、何故か身震いがするような感覚に襲われた。
綺麗な澄んだ、それでいて力強い、高すぎず低すぎず、なんて心地の良い音色だろう。
そして、その上の重なるように沢山の笛が加わってきた、カノンのように追いかけて吹いている感じだ。
「早くいこ」
「なに、急にはりきってんのよ?」
「わ~きれい」
闇の中に土の舞台が浮かび上がって、まわりには篝火。
その篝火からあがる煙が満天の星空にたちのぼり、周囲の木々が荘重な雰囲気を引き立てる。
自然と一体となった舞台が目の前にあった。
そして、その中で響き渡る笛の音、これを神秘的といわなかったら、ほかにどんな表現ができるんだろ。
そして、仮面をかぶった舞人が一人、その打ち者と笛の織り成すリズムに乗って舞台に登場した。
もう後は、ほとんど意識が飛んでしまった状態。
高校の部活で吹奏楽をしていて、フルートを吹いていたけど、この音色は違う。
この笛を吹いてみたい!!
考えても見なかった感情が胸の奥から湧き上がってきた。
「なお、わたしあの笛、吹いてみたい」
「うん、突然何よ?そりゃ悪くないとは思うけど」
「ねえ、ねえ、一緒にあの笛やらへん?」
「おいおい、君はどうした?まあ、私は遠慮しとくは。でも、どうやったらできるんかな?
ああいう人って特別な人がやってんのと違う?なんか、講みたいながあったり」
「う~ん、そうかな?わからへんけど」
目の前の舞台では、先ほど登場した舞人が笛と太鼓のリズムにのって踊っている。
こんな舞ってもっとゆったりした、スローなもんかと思ってたのに、それも予想外。
それにこのリズムのここちよいこと。
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