前回で書きましたように、神社は、古代には神をまつる特定の場所があるだけです。
ただその場所はどこでも良いわけではなく、
今でいえばパワースポット。
神が降臨するにふさわしい場所でなければなりません。
イメージがしやすいのは、例えば富士山や三輪山のように姿の秀麗な山でしょう。
そしてその山麓、あるいは山の中の依りしろとしての木。
それは落葉樹ではなく、常緑で、立ち姿の美しい杉の大木、
あるいは、巨大な岩、もしくは岩座とよばれる岩等が
神の降臨するにふさわしい場所と考えられました。
最初は、あちこちにその場所があったでしょうが、
やがていくつかの特定の場所に収斂されていきます。
そしてそれが、その土地の支配者によって取り仕切られるようになります。
いわゆる「まつりごと」をとりおこなうわけです。
古墳時代、支配者は亡き首長が神と化して共同体の再生産を
保証するという考え方の基に古墳の上、
あるいは造り出し部分で祭祀をとりおこなったと考えられています。
時には独立棟持柱建物がその祭祀に建てられました。
この弥生神殿がおそらく、後の神社建築に繋がって行くと考えられます。
であるとすれば、日本の神は森羅万象の自然物のみでなく、
祖霊信仰も含んでいることになります。
神道と言われる信仰の特徴の一つに、禊祓いがあります。
穢れを嫌い、何より死を穢れとみなします。
古墳の独立棟持柱を持つ建物が神殿であるとすれば、
死者の墓の上に神殿があることになります。
和珥氏の氏神である和珥下神社は古墳の上にあります。
後の禊祓いを中心とする神道とは少し違うようです。
3題話みたいなタイトルですが、靖国について書くことがあったので、
神社と神について、調べ直したことを少し書いてみます。
日本の神道、この神道という言い方も、日本の宗教として、
少しニュアンスが違うのですが、他の言葉に言い換えると、
少し面倒なので、とりあえず神道ということにしますが、
神道には他の宗教のように、教典も教義もありません。
そして当然の如く、教祖というのも存在しません。
言わば自然発生的な宗教であり、その起源は、はるか古代としか言えません。
古代において神は、この世の中に至る所に浮遊し、
姿は見えずモノについたり離れたり、森羅万象が霊魂を持ち、
草木も言問い、けっして善意に満ちているわけでもなく、
人間と同じように喜怒哀楽を持ち、時には害をなすものでした。
山、岩、草木、水すべてが神であり固有の名前はなく、
『本居宣長』によれば
「神とは、かしこきもの」、要するに名前など必要のない、
ただただありがたい存在というわけです。
その様子を『日本書紀』では
「葦原中国は、磐根、木株、草場も、猶能く言語ふ。
夜は熛火の若に喧響ひ、昼は五月蠅如す沸き騰る。」
「出雲国造神賀詞」では
「豊葦原の水穂の国は、昼は五月蠅なす水沸き、夜は火瓮なす光く神あり、
石根、木立、青水沫も事問ひて荒ぶる国なり。」
世界は異風、異俗の神がわがもの顔に横行し、跳梁する世界。
人間の力を超えた神の世界が存在しました。当然神は一人ではありません。
その数は八百万の神々と表現されます。
この場合の八「や」は「八尋殿・大八嶋・八重垣」等々の多数表現です。
最初人々はひたすら神を畏れ、敬い、お祀りをしました。
その神を祀る場所が、やがては神社となって行きますが、
当初はもちろん建物などありません。
ここは 2013年1月に廃業した魚佐旅館の跡地。
奥の方にあるのが、同じく2013年8月に廃業した
地方職員共済組合宿泊所 猿沢荘です。
写真は2013年1月20日に閉店した奈良ビブレの現在です。
マンションの建築中ですでに、売り出しも始まっています。
ここは2010年に廃業した 三条通り角振新屋町のシネマデプト友楽別館
イーストの跡地の建築現場、保険会社のビルが建設中です。
この駐車場は 2006年に廃業した 『大文字旅館』の跡地です。
こんな写真ばかりいくら載せても仕方ないですが、他にも、JR奈良駅西側に
ホテルの誘致に失敗した更地。
さらには大宮にこれもホテルの誘致に失敗した県営プール跡。
さらには、大物として奈良ドリームランド跡の広大な場所が、
固定資産税の納入を巡って裁判となり、いまだ手づかずで放置されています。
これが世界的な観光都市奈良の現状です。
近鉄奈良駅から徒歩5分以内の1等地に立つのが、マンション。保険会社ビル。
いずれも観光とは縁もゆかりない施設です。
こうした現状で、荒井知事は、なんとか観光振興をと考えたプランが、
若草山モノレールですが、ユニセフからクレームが出ると言うお粗末さです。
自然環境破壊は末代まで残りますが、モノレールでは、物珍しさで観光客を呼んだとしても、その影響は一時的なものにとどまるでしょう。
県が打ち出す観光振興策は、シルクロード博、遷都1300年祭と、打ち上げ花火のような
その場限りの賑わい策ばかりです。
何故そうなるか、理由は明白です。
奈良市、奈良県にとって、唯一最大の産業は観光です。
為政者は当然そういった観光産業に携わる人々の意見意向を重視します。
ところが、短的な話、観光業者の目的は、観光客にいかにお金を使わせるか?
いかにお金を奈良に落とさせるかにつきます。
一方奈良好き、奈良を愛する人、奈良をたびたび訪れる人は、
逆にいかにお金を使わずに奈良を楽しむかに腐心します。
言うなれば完全なミスマッチです。
したがって、奈良を訪れる人の声を知るためには、観光業者の声を聞いたのでは駄目と言うことです。
いや、ちゃんと聞いていると言うでしょうが、それは業者のバイアスのかかった声にすぎません。
根本的な観光の振興に役立つ策は、業者や商店街関係者の声にのみ耳を傾けるのでなく、
自分の仕事の利益ばかり考える人の意見でなく、真に奈良を愛する多くの人の意見を聞くことにつきます。
ホテルは誘致しなくても、採算がとれると見れば、向こうの方から勝手に進出してくるのは、京都や大阪のホテルの建設ラッシュを見ればわかります。
皆がなにを求めて奈良に来るかを考えれば、モノレールという発想も決して出てこないと思います。
果たしてこういった声が為政者に届くものかどうか?
アカダマ会では、百舌・古市古墳群。
それに関連して、河内王朝についての話を,2回連続して天野先生に話を
していただきました。
どうもその権力構造が理解できなくて、私は正直、古墳時代が苦手です。
狩猟にしろ、農耕にしろリーダーというものがいた方が良いということは理解できます。
狩猟で各自がばらばらに獲物を追いかければ、労多くして獲物は少なく、
皆で役割分担すれば、最小の労力で獲物を手にすることができる。
これは良く解ります。
農耕でも狩猟ほど顕著ではないですが、やはりリーダーがいた方が効率がよいでしょう。
しかし、そのリーダーからどうして支配被支配の関係が生まれるかが腑に落ちません。
敵がいた場合、戦闘という行為を通じて、力のあるものがリーダーになり、
戦いのなかでその力のあるものが、支配者になると言うのは構図としては考えられます。
そして、他の集落との戦いを通じて、力のある支配者を抱く集落が多くの集落を束ねる。
しかし、ここから王までの道のりが不明です。
権力者の存在は考古学的には、その墳墓から想像できます。
例えば弥生時代の墳丘墓で、前2世紀から3世紀前半のものですが、
武器を持ち墳丘の中に丁寧のおさめられた墓。
墳丘の中ではあるが、いっさいものを持たない墓。
墳丘の中に入れられず、物も持たない墓と武器を持ち3種類に分類され
あきらかに階層があります。
日本海側で1世紀ぐらいに出現し3世紀ぐらいまで続いた、4隅突出型古墳。
その墳丘に丁寧に祀られた人は、その地に有力な首長の出現を示します。
そこから100年近く経って西日本の各地に大規模な墳丘を持つ
前方後円墳が出現します。
いままでの知見では、前方後円墳を構成する諸要素が、近畿地区の弥生の墓制の
発展形ではないようです。
つまり、列島各地の弥生墳丘墓総合化という性格がみられます。
特殊器台や壺、墳丘の形式、葺石、埋葬施設、副葬品等が
各地の古墳の特徴を総合化しているということです。
最古級の前方後円墳である箸墓古墳は研究者の由ってまだ違いはありますが、
概ね3世紀中葉から後半の築造とされています。
ヤマト王権の成立は4世紀前半と想定されて、この箸墓古墳の被葬者と
ヤマト王権との直接的関係は今のところないと見られています。
さて、おりしも巻向遺跡の発掘調査が継続して行われ、
大型建物郡(3世紀前半~中頃)の36メートル東からに続いて、
新たな建物跡が出土したと市教委が6日発表しました。
大型建物跡と一体整備されたとみられ、「宮殿」周辺の建物群が広範囲に及んでいたことを示す発見という。
同遺跡ではこれまで、邪馬台国時代の大型建物(東西6・2メートル以上、
南北19・2メートル)など3棟の跡が並んで見つかっている。
今回、東に離れた場所で出土した建物跡は、東西3・4メートル、南北6・7メートルで、
一部に直径15~20センチの柱も残っていた。
3棟とは同じ方角を向き、中心線も重なるため、関連の建物とみられる。
この北側では、3世紀末以前とみられる建物跡(東西不明、南北4・2メートル)も出土。
さらに、周辺では3世紀後半~4世紀前半の溝のほか、柵とみられる柱穴の列が見つかった。
初期大和政権の時代にも、継続的に土地利用されたことがうかがえるという。
この宮殿跡らしい建物群と、邪馬台国、あるいはヤマト政権との係わりについては、
まだ何も分かっていないと言えます。
当分古墳時代の勉強を続けるしかないようです。
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |