category:From マスター
闇の中に閉ざされた、春日大社の本殿の前を通って、お間い道(おあいみち)といわれる、若宮への道を進む。
と、そこには思いもかけずいっぱいの人出。
正直驚いた。
私は今回始めて、おん祭の夜にこんなことが行われてるのを知ったのに、こんなにも沢山の人が、この神事を見るために寒い夜に集まっているなんて。
若宮社の下で待機してると、「春野さん」と呼びかえられた。
だれ??こんなところで、声をかけられるなんて、ちょっとびっくり。
山本さんだ!!
「あ、今晩は!見学ですか?」
「今日明日とゆっくっり見せてもらいますよ。頑張って」
「はい。」
そうか、そういやおん祭を見に来るって、前にいってたな。
何故か、ちょっぴり嬉しかった。
まもなく、音頭の人が吹き始めた。
澄み切った冬の空気を切り裂くような笛の音が闇夜に響く。
太鼓の音がかぶさるように鳴る。
そして私も。
追い吹きといって、次々と追いかけるように、吹いていく。
師走の夜空、春日も森のシジマに響くのは,ただ笛の音のみ。
なんて幻想的な響きなんだろう、そして私もその一員。
初度の乱声は終わった。
いったんまた寿月館まで引き上げて、二度の迎えを待つ。
繰り返すこと三度。
三度の乱声を促す声が。
「第三度の乱声お願い申~す」
「お~」
今度は若宮社の下で待っていると、宮司一行が松明に先導されて到着した。
やがて、階段の上から再度、三度の乱声を促す声が聞こえる。
やがて、太鼓を打ち鳴らすドンドンと言う音と共に、地の底から湧き上がる様な「お~」と言う神職の声。
いよいよ若宮の神の御動座が始まる。
身震いするような感動がよぎる。
榊と警蹕(軽ひつ)の声に囲まれるようにして進む御神体の後を、楽人は道楽を奏しながら歩いていく。
先頭の松明からこぼれた火が点々と道を照らす。
そして道中には、そこはかとない香のかおりが漂い、その中を御神体が粛々と進み、楽の音が響く。
800年と言う歳月、変わらずに毎年続けられていた遷幸の儀。
800年の昔もこの同じ道を、同じような一行が同じ楽を奏でながら通っていたなんて。
これが歴史なんだ、伝統なんだと実感できる。去年の今頃は、何も知らなかった私が今こうして、楽人として笛を吹いてるなんて、ほんとに夢のよう。
でも、夢と違って現実は大変。
慣れない草履で、しかも笛を吹きながら、暗い夜道を何キロも歩くと言う体験は、これはやってみなきゃわかんない。
おまけに、階段まであるんだよ。
それでも笛は吹き続けなきゃいけないし、行列は、時には止まり、時には早くなり、たまに前の人にぶつかったり、後ろの人に草履を踏まれたり。
まさに悪戦苦闘。一体何度曲を繰りかえしたんだろ?
もう何処を吹いてるのかも解らない、無心と言えばかっこいいけど、朦朧としながら、吹いてるって感じ。
ようやく、お旅所に到着した。
何人かが先行して、お旅所で到着を待って、迎えの乱上を奏す。
神様がお旅所の仮の社にお入りになる。
そこで、灯がともされた。
一斉にどよめきが起こる。見渡せば周りは見学の人で埋め尽くされていた。
篝火からは白い煙が夜空に立ち上り、神を迎えた社が、正面に照らし出された。
荘厳という言葉が自ずと浮かぶたたずまいだ。
やがて神事の後巫女による神楽が演じられた。
風に翻る袖、夜の闇に浮かぶ緋の袴。
冬の夜、何百年もこの光景が演じられていたんだ。
笛、和琴、杓拍子の音があたりの響き、巫女が舞う。
緋の袴がひときわ目に鮮やかだ。。
これを暁蔡という。
日付は代わって17日、午前1時半、おん祭当日を迎えていた。
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