category:From マスター
私がここにいるの、わかってるかな?
こっちの方を見てくれたらいいのにな。
この曲が終わったら、抜けだして、会いに行こうかな。
なんて、考えてたに、なんと隣に女性が・・
そして、仲良さそうに話をしてる。
ふ~ん、客観的に見てもお似合いのカップル。
残念、ま、そりゃそうだ、彼女がいないなんて、逆に考えられないもんね。
私が楽をやってるのは去年から知ってるんだし、私に興味があれば、向こうが探すはずだもん。
ま、いいや、それこそ縁がなかったってことで。
余計なことを考えてないで、ちゃんと吹こう。
集中して吹いてたら、何時の間にか曲は進んで
最後の落蹲、右の舞。
普通、落蹲が独り舞で、納曾利が2人舞らしいが、奈良では逆、落蹲が2人舞。
奈良独特らしいが、ほんとはこれが正しいと言う説もある。
そんなこともあり、この最後の落蹲はとっても奈良にとっては大事な曲。
時間はもう11時近い。比較的暖かかった今年のおん祭も、さすがにこの時間になると、冷えてくる。
笛を持つ手もかじかんで、感覚がない。
おまけに頭もいわば酸欠状態で朦朧としている。
音頭に続いて吹き始めたが、音が出ない。
うっそ、どうして?なんかす~す~かすれた音しか出ない。
力を入れて吹いても同じ。
どうしよ?周りを見渡しても、誰も私のことなんか気にしてない。
一体どうしてだろ、笛を吹き始めて丸2年、こんなこと初めて。
結局、吹いてる鞨鼓をしてるだけで、最後までまともな音は出なかった。
ものすごくショック。
撤餞が終わって、道楽。
これはちゃんと音が出る。
何が起こったんだろ?
まさか、山本さんのことがショックで音が出なかったのかな?
自分でそんなに意識はしてなかったんだけど、
あれこれ考えてるうちに、帰りの道楽は終わってしまった。
なんか、今年のおん祭は納得のできない終わり方をしてしまった。
おん祭が終わればあっという間にお正月。
それに私も年が明けて4月になれば4回生。
この頃は就職難の上に就活の時期がどんどん早くなって、年末年始もうかうかしてられない。
なんか嫌なことばっか。
山本さんに彼女がいたのは最大のショック。
私自身が、こんなに気にするなんて、思ってなかった。
まだ、2、3回茶店であって、言葉を交わしたのもほんのちょっぴりだのに、私ってどうしちゃったんだろ?
付き合ってわけじゃない人に彼女がいようといなかろうと、関係ないじゃん。
と思いながら、又考えてしまう。
それに就職、私って何をしたいんだろ?
雅楽を始めてから、もともと好きだった歴史がますます身近なものになって、
そして逆に自分が何も知らないことにいらつく。
こんなんで就職しちゃって良いのかな?
とも思ったり、じゃ何をしたいの?
もうほんと、考えが行ったりきたり。
正月休みも、そんなんであっと言う間に終わって。
「なお、就活進んでる?」
「全然、まだ何処もエントリーさえできない」
「私も」
「もう面接まで進んだ人もいてるらしいよ」
「え~まだ1月だよ」
『ほんと、いやになっちゃう』
家に帰って
「おかあさん、うちってどこかコネないかな?」
「就職?だめだめ、お父さんはそんなの全然駄目だから、当てにしちゃ駄目よ」
「そうやろな、ねえ、お母さんとしては私に何になってほしい?」
「何よ、急に、あんたの人生なんだから,好きにしたら良いよ。そら、家から通える会社だったら良いな、
とは思うけど。
無理に縛るようなことはしないから」
『うん、ありがとう。だけど、そういわれると,
楽というよりプレッシャーなんだよね」
「あ、今晩、近所の方が亡くなったからお通夜で出かけるから、晩御飯頼むわよ」
「わかった。何処の人?」
「高井さんとこのご主人よ」
「え~!何回か会ったことあるけど、そんなにお年じゃなかったんちがう?」
「そう、まだ50代だったと思うよ、お気の毒にね、癌らしいの、知らなかったんだけど、
6月ごろから調子が悪くって、入退院を繰替えされてたらしいの、おん祭が好きでね、
17日は頼んで退院して見にいらしってたって」
「そんな体でおん祭を・・」
「そう、それが最後の外出だったんだって」
そうなんだ、そんな人も見に来られてるんだ。
前にマスターがおっしゃってた。
「自分は何時ものことだったとしても、見に来られている人にとっては、たった1度の機会かもしれない。
だから絶対気を緩めたら駄目、それはアマだから、プロだからと言う問題じゃない」
その時は、それほど何も感じなかったけど、その言葉の意味が今良くわかった。
それなのに私は、他のことに気をとられて、いい加減な気持ちで笛を吹いて、あげくに音がでなくなるなんて、
ますます自己嫌悪になってしまう。
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