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現在奈良シニア大学で源氏物語の講座を受けているので、
源氏物語の周辺について、記事を書いて行きたいと思います。
前回、良峯安世親王が光源氏のモデルの一人だと書きましたが、
モデルの候補者は他にも何人もいます。
その条件としては平安時代に臣籍降下した天皇の御子であることが挙げられます。

源 融(みなもとのとおる)(822~895).嵯峨天皇皇子、桓武天皇孫もその一人です。
 その屋敷が六条・河原院、現在の千本釈迦堂(清涼寺)にあったとされ源氏物語の
 六条院のモデルとされます。
源 高明(みなもとたかあきら)醍醐天皇の第10皇子。(914~987)
 天禄2年(971)太政官のトップである左大臣となりますが、安和の変で謀反の疑いにより
 大宰府に左遷されます。これが光源氏の明石への蟄居と重ねられています。

醍醐天皇は在位中に37人の皇子女をもうけます。
内18人が皇子、19人が皇女。
18人の皇子の内12人が親王宣下を受けますが残り6人。
盛明、高明、兼明、自明、充明、為明が臣籍降下して源氏賜姓を受けます。
 源氏物語と直接関係ないのですが、この高明の弟が兼明親王で、
後で書く具平親王と並び称される博学多才の人物で
太田道灌の逸話で有名な
 七重八重 花は咲けども山吹の 実の一つだに なきぞ悲しき
の作者です。
高明と同じく左大臣となりますが後
政変に巻き込まれ親王宣下を受け、親王に復帰します。
『菟裘賦』では、「君昏く臣諛」(君は暗君臣は諛)と時勢を批判しています。
そして皇子でありながら左大臣となったとして、その邸三条第家は御子左家と呼ばれます。

そしてこの邸には、後に道長に連なる家ではありますが長家の代から本流とは
はずれ歌道の家として文人の道をたどった俊忠―俊成―定家が住まいし、
その長家流が屋敷に因んで「御子左家」と呼ばれるようになります。
ちなみに、俊成は父俊忠が10歳の時に亡くなって一時義兄の葉室顕頼の養子となりますが
この葉室家の末裔が、先代の春日大社宮司葉室頼昭氏です。

余談の方が長くなりましたが、
もう一人光源氏のモデルと言われる人物が
 源 光(みなもと ひかる)  仁明天皇の皇子。臣籍降下して源姓光。
      
      西三条右大臣と呼ばれ醍醐天皇の延喜元年(901)
      56歳で右大臣正二位となります。
この右大臣の先任者が菅原道真。
推理小説でその死によって最も利益を得る者が犯人とよく書かれていますが、
道真の失脚によってその地位を得た光も首謀者の一人とされています。
延喜13(913)狩猟の際に泥中に駆け入り落馬しますが死骸が見つからず
死去したとみなされるという亡くなり方により、世の人はこれを道真の祟りと考えました。

もう一人
第62代村上天皇の第7皇子具平(ともひら)皇子(964~1009)も有力候補です。

その屋敷六条宮は千種殿と呼ばれ光源氏の六条院に擬せられます。
文才豊で、和歌、漢詩に優れ、書を良くし、諸芸に通じ、まさに光源氏を彷彿させる人物です。

紫式部の父為時と具平親王の母は従妹どうしで、その六条院には
紫式部が一時期身を寄せていた可能性があります。
源氏物語の空蝉は、この具平親王と紫式部の関係がモデルともいわれています。

さらに、具平親王の愛妾雑仕女に大顔と言う女性がいて、この女性との間に男児がいたともいわれています。
ところが、広沢池の月見の際にこの大顔が急死、物の怪に憑りつかれたと
「古今著聞集』に書かれており、この大顔が、
同じく源氏物語の夕顔のモデルであると言われています。

このように具平親王と、源氏物語にはかなり因縁があります。
ところで、この夕顔は、もちろん源氏物語の登場人物で架空の人物ですが
墓と言われるものが京都にあります。
場所は堺町高辻。その名も夕顔町。個人の家の中庭に宝形印塔があるそうで、
夕顔墓と書かれた石塔がその家の前にあります。
夕顔の命日とされる旧暦8月16日にちなんで新暦9月16日に
夕顔を飾り、夕顔忌が営まれているとのこと。
源氏物語を読むだけでなく、こうして周辺のことを
これからも色々調べて行きたいと思っています。
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