category:From マスター
家でも一生懸命練習するんだけど、覚えていないところはどうしようもない。
何とかで出ずに済みますように!
ところが、願いはかなわなかった。
次の練習日、「ごめん奈美、やっぱり無理やねん」
「え~!!」
どうしよ。後練習は総稽古を入れても2回。
でも、代わりはいないし、特別に私のためだけ練習してもらうわけにもいかないし。
「マスター、どうしよ?全然舞を覚えられなくて」
「おや、結局出ることになったの?」
「ええ、2人駄目になって私が出る羽目に」
「でも、ラッキーだね、1年足らずで舞立ちできるなんて、凄いことだよ」
「そりゃ、そうなだけど、でも肝心の舞が覚えられなくて」
「北庭楽やったね。明日は予定は?」
「明日は昼からずっと授業で、朝は空いてますけど・・」
「よっしゃ、そしてら明日朝1番においで、舞思い出しとくは」
「え!!教えてもらえるんですか?」
「う~ん、なんせもなん年もやってないよってに、当てにはならんけど、少しは役に立てると思う」
わ~、ラッキー。あんまり詳しく話してくれないから,わからないけど,雅楽のことは良く知ってるとは思ってたけど、舞ができるなんて思わなかった。
「おはようございます」
「やあ。もう来たんか、こっちももう少し練習しとこかと思ってたんやけど」
「まあ始めよか」
「おやおや、最初からあやふややね、ふ~ん、そしてら、まず手を覚えな話しにならんな」
「あんまり時間もないから、まず拍子で、1,2,3,4.そこで回って、ヅン、ド~。足を突いて」
これまで曲を謡いながらの練習ばっかりだったけど、拍子だけで練習すると手順は覚えやすかった。
「拍子で練習するってわかりやすいですね。
「うん、手順を覚えるのはこの方が頭に入りやすいけど、あくまでも非常手段というか、基本は曲で覚えるもんやよ。ちゃんと頭で整理できたら、曲をつけて練習しよう」
2時間ほどたっぷり練習をしてもらった。
「大分形になって来たな」
「後1回練習しよう、次は何時が良いかな?」
「ありがとうございます。そしたらあさってでもいいですか?」
「わかった、家でも良くおさらいして、わからんとこはわからんて、はっきりさせとき」
最後の稽古日、舞の稽古が終わって笹山さんが。
「よう覚えたな、いや~心配してたけど、これならいける。でも一人でこれだけ覚えるってたいしたもんや」
「実は知り合いの人に教えてもらって」
「へ~、舞を知ってる人がいてたんや、誰や?奈良でそんな人はいてないと思うけど」
「大木さんっていって、喫茶店のマスターです」
「ああ、大木さん」
「知ったはるんですか?」
「先輩や、もうやめて20年ほどになるかな。そやけど、あの大木さんが教えてくてたとはな」
「先輩って、そしたらここでやったはったんですか?」
「うん、笛で左舞、どちらもうまかったな~」
「なんでやめはったんやろ?」
「なんも聞いてないのか?」
「ええ」
「う~ん、話してもええんかな~、まあ、話といた方が良いかな」
「大木さんは、結婚が遅かったんや、そんで、初めての子ができたんが40台の後半やった。
そら、子供をかわいがってな~、また、かわいい女の子やった。
3歳ぐらいやったかな、大木さんが休みの日、稽古日でな、その子がいかんといて駄々こねたんやけど、振り切って、家を出たらその子が追いかけて家を飛び出したんや。
そこへ車が・・・
もう、その後は見てられへんかった。
もう虚脱状態でな。
雅楽もそれっきりやめてしもたんやけど。
そうか、生きてたら春野ぐらいやな」
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