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こういった神様の交代が一斉に行われたわけではありません。

画期となった時期は大きく2回あります。

1回目は言うまでもなく、記紀神話が形成された時期です。

記紀は天武・持統朝のころに形作られたと考えられていますが、
 それ以前の数百年にわたって言い伝えられていた民間神話の集大成が記紀です。

そしてそこでは皇室の正統性、万系一系の皇室史観が語られています。

そして神社の神々も、その歴史観の中に組み入れられ、
  いわば民間伝承の神々は片隅に追いやられます。

中臣の大祓いの祝詞に、皇祖神が八百万の神々と議り、国中の荒振神々を払い、
  磐根、樹根立草の言問うのを止めさせたと書いてあるのがこれです。

『日本書紀』神代下

 「然も彼の地に、多に(ほたる)()(かがや)く神、及び蠅声(さばえ)す邪しき神有り。
 復草木
(ことごと)くに能く言語(ものいうこと)()り。

  故、高皇産霊尊、八十諸神を召して集へて、問ひて曰く、
  「吾、葦原中国の邪しき鬼を撥ひ平らけしむと欲ふ。・・・・」

このように、先住の神を「邪しき鬼」呼ばわりし、

「二の神遂に邪神及び草木石の類を誅ひて 皆已に平けぬ。

 其の不服はぬ者は、惟星の神香香背男のみ。」

「邪神及び草木石の類」は神であったのに、

不服従の故をもって誅戮の対象とされ、

天つ神による国つ神の平定が語られます。

荒ぶる神、岩根、樹木、草の葉も言語うことを

やめさせられます。国つ神の零落です。

このようにして天つ神が国つ神にとって代わり神々も律令体制に組み込まれて行き、

神々にも自分らの祖先神をあてはめて名前をつけていきます。

山や石や水など自然そのものを対象としての信仰は、姿を消し、

皇祖神に連ならない八百万の神々は

言わばリストラされてしまったわけです

だからと言って消滅したわけではりません。

それぞれの地の神々が、記紀神話の神々の中へ取り入れられて行きました。

 当初単なる畏敬の対象であった太陽は「天照大神」となりました。

おそろしい雷は「武甕槌神」と名前を変えます。

 自然現象も古事記の八俣のオロチの話は、土石流、
    あるいは溶岩流の経験を語り継いだもの
と考えられます。

このように、古来語り継いでこられた、神々・伝承も、
  記紀神話に取り込んでいったのです。

2回目は江戸時代から明治にかけてです。

江戸時代中期の歌学者契沖が創始したとされる国学が江戸時代後期の平田篤胤に至って、

復古神道など宗教色を強め、やがて、賀茂真淵は、契沖と荷田春満の国学を

体系化して学問として完成させ、
 
真淵門人である本居宣長等を経て 明治維新の思想的礎となり、
 
それが明治期の国家神道へとなっていきました。

そこでさらに、神社はアマテラス、ツクヨミ、スサノヲを祀る伊勢神宮を頂点に

明治政府によって国家神道に基づく系列化がはかられ祭神の調節も行われました。

また経費節減のため、1906年の勅令によって

神社合祀政策がとられ、全国で1914年までに
  約
20万社あった神社の7万社が取り壊された結果、
 
神社の数は神社本庁所属社で7万8千余社。

推定でそれ以外を含めて12万となりました。

その中で、古代からある社として

『延喜式』記載の社3千百32座。

これは座数で社の数は2800社ぐらい。

それ以外にも4,5百社。

合わせて3千2,3百社が古くからの社です。

天皇や臣下を祀った社は

古い時代にはなかったものです。
 

例えば菅原道真を祀った天満宮は平安時代以降。

天満とは、恨みが天に満ちる怨霊思想であり、

仏教と神道の混淆によって生まれたものです。

また江戸時代には徳川家康を祀った東照宮。

明治以降にできた社では湊川神社、四条畷神社。

天皇を祭神にした、明治神宮、近江神宮、平安神宮、橿原神宮などがあります。

 神社は当初は、所謂、天神地祇、霊を祀ったものでしたが、
  やがて記紀神話の基づく神々がその主役となり、神道と呼ばれる時代には、
  天皇や忠臣、また恨みを含んだ怨霊などが祭られていきました。

 このように、神社に祀られる神は、長い年月の間、時代とともにその性質を変えてきました。

最初は山や石や水など自然そのものを対象とした神でした。

古墳時代には、首長の霊も神として祀られるようになりました。

これらは国つ神と言えます。

そして、律令体制の整備とともに、記紀神話に登場する神々が天つ神として登場します。

そして江戸時代の国学から明治以降神道と変わる過程で、
 皇祖神、天皇が神に加わって行きます。

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