鏡が神の形代であれば、容易に動かすことが可能です。
そこから倭姫に託された神が巡幸すると言う話が可能となります。
雄略記では稚足媛(ワカタラシ・幡姫)が神宮から鏡を持ち出して埋めたと言う話を載せています。
一方で、伊勢神宮は倭姫がアマテラスの形代である鏡を持ってくる以前から存在したと言う説もあります。
アマテラスが降臨したのは日向ではなく伊勢という話です。
タジカラオ、ウズメ、サルタヒコ、タクハタ、オモヒカネ等天岩戸に関る神は伊勢にゆかりのあるものが多くあります。
『古事記』では「度相宮」に坐すトヨスキも天孫降臨につき従った神と書かれています。
『常世に浪寄する』といわれた常世は、東の海上の豊穣の世界と認識され、伊勢の海の東の向こうから昇る太陽の姿の基づく日神信仰から天の岩戸の物語が語られたとも言います。
『日本書紀』垂仁25年のあるところの
「則天照大神始めて天より降りますところなり」とあるのがそれです。
さらには、アマテラスとは別の神を祀った神社だと言う説もあります。
尾張氏の祖神に「火明命」があります。
『新撰姓氏録』では天孫の部に入っています。
この神は天火明命とも、天照国照彦天火明命、また天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊とも単に饒速日命と呼ばれています。
ただし、物部氏に祖神である饒速日とは違うと言われています。
この神が天照神と同一神で、皇室の祖神天照大神の原型の一つとしての太陽霊格であろうかと考えられています。
しかし、伊勢の天照大神とは別の日神で、男性神格と考えられています。
そして日神には、海人族ゆかりのある霊格で、その中の別格として、対馬系の日神・天日神命(アメノヒノミタマノミコト)があります。
対馬は天道信仰など古くから太陽信仰が行われ、日光受胎譚等も語られています。
日神として下県郡の阿麻衰氐留神社があり、これは後世与良郡小舟越村にあって照日権現となづけられ、これが対馬県主等の祖「天日神命」であるとされます。
それ以外の天照御魂神の多くは、尾張氏及び、その同族と伝えられる畿内の諸豪族の奉載する神です。
これらの氏族の共通の祖先とされる火明命の名が『日本書紀』『旧事本記』では、天照国照彦火明命と呼ばれ、「天地を照らす光輝」すなわち太陽の光を人格化した名であるようです。
そして天照神社・天照御魂神社の祭神としては、天孫、火明命を祀ると伝えていることが多い。
以上のように、いわゆる皇室神天照大神とは違う天照神が存在しています。
ただ天照大神と天照神は全く違うかと言うと、これは微妙で、
伊勢大神が古くはアマテル神と呼ばれていたことは、神楽歌
「いかばかり よきわざしてか 天(あま)てるや、
ひるめの神をしばしとどめむ」とあったり、
皇大神宮鎮座の伊勢度会郡にある神路山の一名を天照山(アマテルヤマ)といっており、アマテラスはアマテルに敬語をつけた形に他なりません。
そして天照大神がかっては男性太陽神であった形跡すらあります。
それが女性化したのは神妻として仕える斎宮の印象が強大となり、
神格に投影したからという可能性も指摘されています。
以上、天照大神と天照神は違う扱いであることは確かではありますが、別物と言い切るのも難しいのが現状です。
とにかく天照神は尾張氏の祖神です。
そしてその尾張氏は葛城氏と深い関係があり、尾張氏、葛城氏は皇室と深いつながりがあると考えられています。
このように、伊勢の神についてもなかなか一筋縄ではいきません。
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