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「あ、ここかな?ちょっと人が見えるよ」
一の鳥居をくぐったら、参道には昼間のお渡りのための竹矢来、そして向こうの方に明かりが見えてほっとした。
あんまり人が少ないので、ほんとにやってるか、かなり心配になってところ。
と、ど~んという、重い太鼓の音が聞こえた。
間違いない、あこだな、どんどん歩いていくと、太鼓の音に重なるように、乾いた鼓の音、それに鉦の音も。
さらに、笛の音が・・・その音色を聞いた時、何故か身震いがするような感覚に襲われた。
綺麗な澄んだ、それでいて力強い、高すぎず低すぎず、なんて心地の良い音色だろう。
そして、その上の重なるように沢山の笛が加わってきた、カノンのように追いかけて吹いている感じだ。
「早くいこ」
「なに、急にはりきってんのよ?」
「わ~きれい」
闇の中に土の舞台が浮かび上がって、まわりには篝火。
その篝火からあがる煙が満天の星空にたちのぼり、周囲の木々が荘重な雰囲気を引き立てる。
自然と一体となった舞台が目の前にあった。
そして、その中で響き渡る笛の音、これを神秘的といわなかったら、ほかにどんな表現ができるんだろ。
そして、仮面をかぶった舞人が一人、その打ち者と笛の織り成すリズムに乗って舞台に登場した。
もう後は、ほとんど意識が飛んでしまった状態。
高校の部活で吹奏楽をしていて、フルートを吹いていたけど、この音色は違う。
この笛を吹いてみたい!!
考えても見なかった感情が胸の奥から湧き上がってきた。
「なお、わたしあの笛、吹いてみたい」
「うん、突然何よ?そりゃ悪くないとは思うけど」
「ねえ、ねえ、一緒にあの笛やらへん?」
「おいおい、君はどうした?まあ、私は遠慮しとくは。でも、どうやったらできるんかな?
ああいう人って特別な人がやってんのと違う?なんか、講みたいながあったり」
「う~ん、そうかな?わからへんけど」
目の前の舞台では、先ほど登場した舞人が笛と太鼓のリズムにのって踊っている。
こんな舞ってもっとゆったりした、スローなもんかと思ってたのに、それも予想外。
それにこのリズムのここちよいこと。
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