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あくる日、夕方に2人で二月堂まで行った。
もう二月堂の周りはいっぱいの人。
奈良の人でも未だにお水取りは1日から松明が一本づつ増えて行くんだ
とか、お水取りは12日で終わりだ、なんて言う人がいてるのに、
14日の平日の夜にこれだけの人がいてるなんて・・
「すっごい人、12日だけ人出が多いと思ってました」
「今日は最終日でね、普段と少し松明の上がり方が違うんだよ」
「へ~そうなんだ、皆知ってて来てるわけ?」
「そうだよ、だって何時も7時からだけど今日は時間も早いんだし」
「今日はどんなふうに上がるんですか?」
「何時も上堂衆と一緒に1本づつ上がって、回廊を通るんだけど、今日は一斉に回廊に10本並ぶんだよ」
「へ~フィナーレってとこかな」
「そうだね、お別れの挨拶かな」
やがて,鐘の音と共に松明が上がってきた。
「ほんとだ、つぎつぎに上がってくる」
「前の人のお尻を焦がすぐらい、次々上がるから尻つけ松明って言うんだよ。」
「すっごい」二月堂の舞台に並んだ松明が一斉に打ち振られた。
火の粉が滝のように流れ落ち、舞台の下に待ち構えた人たちからどよめきと歓声が沸きあがった。
「春野さんは、初めて?」
「14日にこんなことしてるって、全然知らなかった。」
「さ、上へ行こう」
「上って」
「修二会の行を拝観するんだよ」
「え~そんなの見れるんですか?」
「早く行かないと、入れなくなるよ」
初めて二月堂の局(局)と言われるところに入って驚いた。
どうせ年配の人ばっかりだろって思ってたのに、
意外と若い女性が多かった。
内陣は女人禁制だから、女性はここからしか見ることができないんだけど
、それでも見たいという熱心な人が多いらしい。
でも、中の様子はまったくわからない。
「ねえ、私に付き合ってここにいたら何にも見えないでしょ」
「いや、昨日もおとついも見たからもういいんだ、
中にいてもそんなに見えるわけじゃないしね。
奈美ちゃんと一緒のほうが良いから。
ぎゃは!!さりげに今の言葉。
なに?ひょっとして・・・
それに奈美ちゃんだって、今まで春野さんだったのに。
なんかドキドキしてきた。
もうちょっと何か言ってほしい。
わたしのリアクションはどうしたらいいんだろ?
その時、内陣の中の籠もりの僧の足音が激しく響いた。
帳に映る人影が激しく揺れ動く。
籠もりの僧の激しい息遣いが私に乗り移ったような錯覚に陥る。
その時、帳が巻き上げられ。ほら貝の音とともに内陣の中で炎が
燃え上がるのが見えた。
いったい中で何が行われているのだろ?
次の瞬間、灼熱に燃え上がり、
ぱちぱちと音を立てる松明がいきなり目の前に投げ出された。
思わず、山本さんにしがみつく私。
1瞬お堂の中の空気が、かっと熱く感じられた。
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