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2月に行われるから,修二会の中のほんの一部。
お水取りは、その中で、12日の深夜に若狭井から、
ご香水を汲み上げる行事が行全体を指すようになったということだ。
そしてお堂の中で深夜、12,13,14日の3日間だけ。走りの行法、韃陀の行が行われる。
韃陀は内陣の中で火を使う激しい行で、お水取りの中の謂わばハイライト。
お水取りが、水と火の行事といわれる所以になっているということ。
修二会は六時の行法といわれて、日中(午後1時過ぎ)、日没(午後1時半ごろ)、
初夜(午後7時過ぎ)、半夜(午後11時半ごろ)、後夜(午前0時ごろ),
晨朝(午前1時ごろ)と行が行われる時間が決まっているらしい。
私たちが二月堂に行った時間は籠もりの僧は下堂していて、内陣には誰もいなかった。
それでも、今晩使われる松明が用意されていたり、人も多くて普段の二月堂とは少し雰囲気が違って見えた。
そのあたりを説明してもらいながら少しぶらぶらしてから、下まで歩いていった。
ほんとなら、東京の人に私が説明しながらというのが普通なんだけどな。
関西の春はお水取りからと言われる。
でも奈良の三月は、まだまだ空気は冷たい。
だけど、梅、レンギョウ、そしてあたりに芳香を漂わす沈丁花と花々は確実に春の気配。
私は桜の咲く春爛漫の頃より、この冷たさを含んだ早春の季節がお気に入り。
そして二月堂から戒壇院へのこの道も。
2人で話しながら歩いていたら、駅までの道もすぐについてしまった。
「いらっしゃい、やあ2人一緒だったんだ。」
『今日は山本さんの案内で春日から二月堂まで行ってきました』
『そう、それは良かったね、山本さんはいろいろ詳しいから勉強になったやろ』
「いや~そんな,奈良の人に奈良の説明なんてできないですよ」
『今日大和舞をみてきました。舞楽と違って動きが優雅で、うったりしていて素敵ですね、
マスターも舞わはったことあるんですか?』
『うん、あるよ、確かに舞楽とは動きが全然違うね。もちろんちゃんと拍子で舞ってるんだけど、
舞楽みたいにきちきちとした感じがないだけ、余計難しいかも』
『私も舞いたいです』
「なんか、最近あれもやりたいこれもやりたいばっかりだね」
「いや~。そんなあつかましことないんやけど、羨ましいんです」
『そうだね、女性にはチャンスがすくないもんな』
『練習だけだったら何時でも教えたるけど、実際に舞えなかった意味ないしな』
「ほんまですか?本番で舞えなかっても、教えてください!」
『それでもええんやったら、何時でも教えるよ』
『約束ですよ』
『うん、わかった』
「わ~うれしい」
『良かったね、春野さん、こうやって身近に教えてもらえる人がいるなんて羨ましい』
『私思うんですけど、どうして日本の学校で雅楽とか古典音楽教えてないんですか?』
「そうやな~、古いことを言えば、明治の欧風化政策から始まるんやろかな、山本さん」
「そうですね、とにかく西欧に追いつき追い越せと一生懸命だったから、
日本のよさを省みなかったと言うことでしょうね」
『決定的には戦後のGHQの政策かな』
『そうですね、日本文化を徹底的に破壊することが目的やったかもしれませんね』
「ま、そいうこっちゃ、せやから戦後教育で育ったもんは、まったく日本の昔からの文化を教わってないんや」
「だから、教えたくても教える側が知らないんですからね。
春野さん、あなたのように、雅楽を実際にやってる人が教育者になって、
これからの子供達に日本の昔からの文化を教えてほしいな」
「そんなんむりですよ~そら教育課程もとってるけど、私は国語やし」
『国語で良いやん、たとえば源氏物語とか古典を教える時に実際に音楽を聞かせてあげたら良いねん』
『それは良いですね、口で言うより本物を聞かせてあげれば子供達も興味を持ちますよ』
「そんなん言われても・・・」
そう言いながらも、ちょっと惹かれるものがあった。
「でも、わたし何も知らへんし」
「これから勉強すればいいやん、まだ若いねんから」
う~ん、たしかにもっと勉強したい、前に中冨君が言ってたけど、先生も雅楽のことなんもしらんねんって。
これって、やっぱり変、それに奈良の先生が知らなきゃ話にならへん。
私の気持ちの中で、何かが大きく動き出した気がする。
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