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もう4月だというのに、私の就活はまったく見通しも
たたなかった。
ようやく面接までこぎつけた企業もあったが、
自分で本当のところ、何をやりたいのか迷いがあるから、志望動機にしても、通り一遍のことしか言えないし、
それが相手にも伝わるから、
落とされるのは自分が悪いってわかってる。
「あなたの答えはマニュアルどおりと違うの、
もうちょっと自分をアピールできることはないのかな」
「当社に何故入りたいのか、もっと明確にってくれなきゃ、もうちょっと積極的にアピールしてくださいよ」
とか言われて、落ち込んで、ほんと私は何処へ行って、
なにをしたいんだろ?
こんなんでは、相手の気に入るような答えを言えない。
就活は嫌な事ばっかりだけど、ただ1つ、
自分をもう一度見つめなおすきっかけにはなった。
そんなさきの見えない就活の救いは、
祐介とのメールと雅楽だった。
笛を思い切り吹けば、その時は頭の中の嫌な事は霧散してしまう。
だから、就活中も稽古は欠かしたことはなかった。
ほんとに打ち込めることがあって幸せ。
笛を吹いて一生暮らせたらなんて考えてしまう。
5月の演奏会が近づいたけど、稽古はできるけど、
予定がたたないから、今度は自分で申し出て、
役ははずしてもらった。
もっとも、言わなくても何も役はなかったかもしれないけど。
稽古は熱心に出てたから、舞も随分沢山の曲を練習した。
演奏会には出れないけど、舞の練習も気分転換にはもってこい。
やっぱ、体を動かすのは良い。
その間はほんとに舞のことしか考えていない。
そして、もう舞台に上がれないとか、出番がないなんてことは気にならなくなった。
こうして、打ち込めることを持っていることが、素晴らしいことなんだとわかった。
今日も舞の稽古をしてる時に、笹山さんが
「春野、ほんまによう覚えてるな、いま若手の中では舞をやらせたら1番やろ」
なんて,珍しく褒めてくれた。
「惜しいな、5日出れたら舞立ちしてもらおうと思ってたんやけど」
え~、今それを言うかって感じ。
でも素直に嬉しい。
「ほんまですか?男の中に?」
「そんなん関係ないは、ちゃんと舞えるかどうかが問題や、春野、もう左舞ほとんど全部マスターしたな、後は経験だけや」
嬉しい。ちゃんと解ってくれてるんだ。
その言葉だけで十分、ものすごく力がわいてきた。よし!!明日の面接頑張るぞ。
 
 
「あなたの大学生活でアピールできることはなんですか?」
「はい。奈良で学生生活を送って最大の収穫は雅楽のめぐり合えたことです」
「雅楽を通じて、日本の伝統文化に眼を向けることができましたし、奈良の伝統行事にも実際に関われることができました。これは私にとって大きな誇りです」
「ほう、雅楽ね~それは確かに奈良らしいね。
じゃ、その経験はを社会人になって、どう生かせると思うかな?」
「最近は海外との関わりを避けて通ることはできないと思います。
そう行った中で、真のグロバリゼーションは、逆に日本を、日本文化を良く知ることが前提と思います。
その意味でも私の経験は必ず実社会で役に立つと確信しております」
「なるほど、あなたは日本文化について良く学んだということだね」
「あ、はい、もちろん、まだまだ勉強不足だとは思いますが・・・」
「まだ勉強しないと、と言うことだね」
「はい、もっともっと勉強はしなければとは思っています」
「それじゃ、まだ社会に出てもあんまり役にはたたないってこと?」
「いえ、そういうわけじゃ」
所謂圧迫面接というやつとは解っているけど、悔しい。
何故って、自分がそう思ってるから。
自分で答えていながら心は、これじゃ駄目だと思った。
ほんとに私はまだ何も知らない、ほんとうにもっと勉強すべきだ。
逆に今卒業して社会人になってしまうことが、自分にとって良いことなのか?
今日の面接で、はっきりとわかった。
このまま社会に出ても駄目、いかにも中途半端だ。
心のもやもやが逆に晴れてきた。
就職はやめよう。
大学院に進んでもう少し今の経験を自分の中で咀嚼しよう。
真っ先に、祐介に相談した。
その答えは、私の考えに全面的に沿ったものだった。
「就職については相談に乗れなかったけど、そう言う決心をしたんだったら、役に立てるよ。
是非うちの大学へおいで。
院試は9月だ。
先生にも紹介する。そうだ早い方がいいから1度東京に出ておいで、都合のいい日を連絡してっくれたら、アポとっておくから」
急激にいろんなことが動き出した。
ゼミの先生にも相談した。
先生は快く推薦状を書いてくれることになった。
親も説得するまでもなく、自分の進路は自分で決めたら良いと言ってくれた。
「なお、わたし就職をやめて院に進むことにする」
「うっそ~、え~なにがあったの?
ふ~ん。まじなんだね。いいな~やりたいことがあって。
わたしなんか何にもない。
なんとなく就職して、いいお婿さん見つけてなんてしか考えてないのに。」
「面接で答えてる間に、決心したんだ」
「そうか、頑張って。応援するよ」
「ありがとう」
 
中学の修学旅行以来の東京。
今度は一人。
でも祐介がいてる。
向こうの大学の手配はすべて祐介がやってくれた。
「さあ行こう、研究室は汚いからびっくりしないで」
通された研究室は汚いというより、文字通り足の踏み場もない乱雑さだったけど、なにかほっとする暖かさが感じられて、それだけで好感が持てた。
教授は思ってたより若い先生で、頭はぼさぼさ
、口ひげを生やした良く言えばアインシュタインを若くしたような気さくな人だった。
ここでは企業の面接とは違って、本当に心の中から出た言葉で自分のやりたいことが語れたので、逆に話し過ぎないように自分でブレーキをかけなければいけないほどだった。
「よ~くわかりました。頑張って是非来てください。僕は大歓迎だよ」

 

 

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