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東京から帰ったあくる日、早速マスターに報告に行った。
「そうか、良かったね。じゃ来年から東京か・・
もうあんまり会えなくなるな~」
「100%じゃないけど、多分大丈夫と思います。
もちろん今までのようには来れないけど、奈良に帰ったら必ず寄ります」
「そうやね、楽しみに待ってるよ。そうだ、前に大和舞を教えてほしいって言ってたけど
、どうや、蘭陵王を舞ってみるか?」
「え!蘭陵王?そりゃ舞いたいけど・・
私にできるかな?」
「もう平舞は全部覚えたんやろ?それやたったら資格は十分や」
「でもな、僕が教えたからって、正式に習うわけやないから、楽所で舞わせ貰うことにはならへんと思うけど、
それでも良いのやったら教えるけど」
「教えてほしいです!陵王を舞う、舞えるなんて夢見たい。私が始めて見た舞楽が蘭陵王。
言わば私を雅楽への道に誘ってくれた舞です」
「よし、わかった、そした早速今晩から練習しよか?いいか?」
「ハイ、お願いします、嬉しい!!」
日本舞踊みたいに雅楽には家元とか流派はない。
しかし、本当は家元制度の元は雅楽だったらしい。
それが明治になってすべて一般に開放されて今の形になり、お花とかお茶とか日舞とか、
雅楽をまねてできた家元制度が残る結果になったということだ。
だから、昔は一子相伝とか一時伝授とか、どの家はどの舞とか、かなり制約があったみたい。
今はすっかり、そんな制約はなくなったけどだからといって、そう簡単に教えてもらうわけではない。
だから、マスターに教えてもらえるなんて、夢のよう。
今のままだったら、多分一生教えてもらえずに終わってたと思う。
 
その晩から稽古が始まった。
陵王は、3部構成になっていて、最初に出る手、当曲、入る手と分かれる。
その出る手の中で、囀りといって、まったく無音というか、拍子の太鼓も鞨鼓もなく、舞だけが進む部分もある。
ともかく、その最初の出る手。
そう、私が始めて舞楽を見たときに、あの太鼓と鞨鼓のみで舞うところ。
太鼓が4拍子で、ドン、ドン、ドン、ドンとなる。
そこへ鞨鼓が重なるように打たれる。
ドン、テン、スッテンテンと聞こえる。
「ええか、舞には1300年を超える伝統がある。だから約束事、決まりがあるからその部分は決して崩したらあかん。だけど、余りにも型に拘ってもあかん。自分の個性をその中でも出すのや」
う~ん、なんとなく解るけど、今はまだ手を覚えるのに精一杯。
陵王をちゃんと舞えば30分はたっぷりかかる。
今出る手を舞うだけでも、もうくたくた。
太腿は、ぱんぱん、汗びっしょり。
だけど、楽しくってしかたない。
普通の舞楽は4人舞い。
だけどこの陵王は1人で、舞台の端から端へ駆け回る。
まさに舞台を独り占めする。
それだけに体力の消耗も半端じゃない。
若い私でもひいひい言ってるのに、マスターは、ほんとにしんどそう。
「マスター、大丈夫ですか?」
「なにが?舞の練習ぐらい大丈夫や」
「そうは見えないんだけどな~」
「何言うてるねん、ぐだぐだいわんと稽古や稽古、せやけど、奈美ちゃんも意外とスタミナあるな」
「そら、若いですもん」
「僕は年寄りてか」
「そんなこと言ってません」
「言うてるのといっしょや」
なんて言いながらも稽古を続けた。
家に帰ってからも、毎日稽古。
何度も何度も練習した。
この2年余り平舞の練習を続けてきたおかげで、舞固有の手は身についたので、
初めて舞を習った時とは全然違う。
複雑な舞の手も自然とできるようになった。
2ヶ月たっぷり練習して大体覚えることができた。
「さあ、もうすぐおん祭も始まるし、今日で練習も終わりにしようか、この面をつけて今日は通して舞ってみなさい」
「え~この、しずかちゃんのプラスチックの面をつけるんですか?」
「そや、やっぱり面を実際につけて見んと感覚がわからへんから」
「それにしても、もうちょっとらしい面なかったんですか?」
「贅沢言いな、意外と面を売ってなくて、これしかなかったんや」
実際、面をつけて舞うとものすごく視野が狭まかった。
足元なんか、まるで見えない。
確かに面をつけての練習は必要だ。
「よっしゃ、よう覚えたな。ご苦労さん」
「ありがとうございました。まだまだ教えてもらいたいですけど、これからも毎日家で練習します。解らないところがあったら、また教えてください」
「うん、後は場数をこなしたらいいんやけど、それが難しいな」
こうして、陵王の舞を教えてもらった。
東京へ行っても忘れないように練習しなくちゃ。

本番で舞うことはないかも知れにけど、私にとっては得がたい経験と財産になった。

 

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