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今回のソムリエアカダマ会は紀寺についての話しです。
講師は璉珹寺通信編集長の野尻氏です。

奈良市民であれば、市内循環で紀寺と言うバス停があることはご存知の方も多いと思います。

そのバス停で下車して、時間があるから一度紀寺と言うお寺を訪ねてみようと思ったとします。
しかしどこを探してもそんなお寺は見つかりません。
通りがかりの人に聞いても首をかしげるばかり。
まさに幻の寺。

近鉄西大寺駅が西大寺と言う寺の近くであることを知られていないのと
同じかもしれませんが、西大寺は存在しますが、紀寺と言う寺は存在しません。

と言うわけで、今日はその紀寺の歴史について話していただけるということ。
長年奈良に住みながら勉強不足のわが身にとっては大変興味深い話です。

話しは平城遷都より100年さかのぼった推古朝から始まります。
あの有名な小野妹子が率いる遣隋使に従った学僧の中に恵隠と言う僧がいました。
隋にて30年と言う期間学を修めた恵隠が帰国して、孝徳天皇に無量壽経を購読した
という記事が日本書紀にあります。
その恵隠上人が住いした寺が訳田寺、通称「紀寺」です。
訳田者と言うのは、今でいう通訳のことで、渡来人が建てた寺で訳田寺。
その檀那となったのが紀氏であることから、通称紀寺と呼ばれたと言います。
さてその紀寺が藤原京では左京8条2坊に移されたとあります。
現在の明日香村大字小山小字キデラがその地と思われます。
但し発掘調査では紀寺である確かな証拠は見つからず、「小山廃寺」と呼ばれています。
藤原京でも地名にキデラを残しますが、幻の寺と言うわけです。

さて次に平城京。
ここでは左京5条7坊に紀寺は移されます。
文献では「続日本紀」天平宝字8年(764)7月の記事に紀寺の奴、
云々と言う記事があり、その存在が確認されます。
現在奈良市役所に奈良文化財研究所が監修して制作した平城京の
復元模型が展示されていますが、そこにはしっかりと紀寺が復元されています。
740年に聖武天皇が奈良の都を離れ遷都を繰り返しが再び平城京に戻った
745年ごろ、聖武天皇の発願、行基菩薩開基の寺として璉珹寺が創建されます。
法興寺(飛鳥寺)あるいは元興寺が奈良の都に移された後も旧名により飛鳥寺と
称されたように、璉珹寺もその頃、旧名により紀寺と呼ばれていたようです。
また檀那として紀氏のかかわりがあったと思われます。

寺名の璉珹については、野尻氏は出展を史記の戦国時代、
秦の昭王と趙の恵文王の間で和氏の璧を巡って繰り広げられた
故事に由来すると考えられています。
この話は完璧という言葉の出典にもなっている故事です。 
その当時紀氏には紀清人と言う、聖武天皇の侍講も務めた
中国の古典に優れた学者がおり、彼がその命名に関わった可能性を指摘されています。

以上でお分かりのように、現在紀寺と言う寺はなく、
裸地蔵として有名な璉珹寺が、
藤原京時代に紀寺と呼ばれたことから、
奈良でも通称紀寺と呼ばれたということです。

さてそれでは紀寺を氏寺とする紀氏とはどういう氏族かと言えば、
遠く祖先は武内宿祢とされる氏族で,文武天皇の妃として紀朝臣竈門娘をだし、
また、大宝元年には、藤原不比等、大伴安麻呂と共に3人の大納言の一人として
紀朝臣麻呂が名を連ねています。
このことから、奈良時代の初めには有力豪族であったことが伺えます。

ただその後紀氏は政権に近い立場より、学問の家として身を立てたようで、
先に璉珹寺の命名に関与したと思われる紀清人を始め、
土佐日記で有名な紀貫之、
百人一首にも取り上げられている紀友則、
さらに菅原道真の詩友である紀長谷雄等
学者、歌人として高名な人物を輩出しています。

奈良から都が遷った後の紀寺ですが、長岡京にも左京6条2坊に移り、
さらに平安京では寺名を誓願寺と変えていきました。

奈良の寺の平安京への移転を嫌った桓武天皇の下では珍しいことです。
おそらく政権から距離を置いたことが幸いしたのかもしれません。

以上が今回のアカダマ会の紀寺の話しの概略ですが、
まぼろしの寺と言われる紀寺の姿が
おぼろげに見えてきた気がし、なかなかに興味深い話でした。

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